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粘性土脱水

粘性土の真空脱水に関する現位置実験

この実験は西松建設株式会社と株式会社アサヒテクノが共同で行ったものをここに報告します。

1.はじめに

真空揚水工法として,スーパーウェルポイント工法は砂れき地盤からシルト質地盤まで、広い範囲の地盤に適用でき、通常のディープウェル工法に比較して、2~5倍の揚水効率を有することが現場測定および模型実験によって確認されている。この真空脱水工法を通常は揚水工法が適用困難とされている粘性土地盤に適用して、粘性土の含水比を低下させることができるならば、開削工事等における施工性の改善および掘削土の有効利用に大きく貢献することが可能となる。我が国において軟弱地盤として扱われている沖積粘性土は、一般に粘土層中に薄い砂層を狭在していることが多いことから、過去のスーパーウェルポイント工法の適用例においては粘性土での脱水促進の可能性が示唆される結果が得られている。今回、脱水条件がより厳しいと想定される中間部に砂層を含まない海成粘土を対象として現位置での脱水実験を計画し、シンガポールの工事現場を利用して、marine clay層を対象に実験を行った。試験は現在も実施途中であり、明確な結論を得るまでには至っていないが、現在までの状況について報告する。

2.実験場所および土層構成

試験場所の配置

シンガポールの海岸付近では透水係数の小さい(10-6~10-8cm/sec程度)marine clayが厚く堆積している。その自然含水比はupper marine clayで60~60%、lower marine clayで50~60%である。試験はupper marina clayを対象としており、試験場所は約18m×13mの広さで、その周囲は連続地中壁およびシートパイルで囲まれており、底部には全面改良のJGPが施工されている(図1および図2参照)土層構成は表層部にFillおよびPeaty clayが約6mあり、その下に今回の試験対象であるmarine clayが約11mの厚さで堆積している。

3.実施工図

試験場所の模式断面図

marine clay部分にスリットを設けたSWP井戸を試験場所に設置し(図2参照)真空揚水による粘土の物性の変化を調査する。調査は以下の3つのステージで行っている。
事前調査:SWPを施工する前のmarine clayの物性値の確認のため、含水比分布およびせん断強度試験(現位置ベーンおよび三軸CU試験)を行った。調査位置は図1のPZ1~PZ3付近である。
稼働中調査:SWPを稼働中の動態観測として、作用真空圧、揚水量、地表面沈下量(図1のA1~A1O)および粘土層の間隙水圧測定(図1のPZ1~PZ3)を行った。なお、試験途中からは、SWP井戸内の水位測定も行っている。 事後調査:SWP稼働終了後に、事前調査と同様の調査を行う。

4.試験結果

ストレーナ管内の真空圧

試験中のSWP井戸内の真空圧の変化を図3に示した。
SWPの運転開始後から1月11日までは揚水時しか真空圧を測定していない。また、井戸内水位の制御機構とポンプ能力が大きな要因と推定されるが、SWP設置直後は真空を作用させた状態での揚水が困難であったので、揚水時に真空弁を開いてストレーナ内を大気圧に解放した。その後、水位制御装置の変更等によって、1月14日以降はストレーナ管内を大気圧に開放することなく揚水が可能となった。また、揚水時にストレーナ管からの排水が行われたときには、ストレーナ管内の真空度が低下する現象が見られている。これは、粘土からの供給水が非常に少ないために、井戸周辺の地盤から微量の空気が流入するためであると考えられる。低下した真空圧は比較的短時間で所定の値まで回復するが、揚水に長時間(1~2時間程度)を要したときには、低下した真空度が所定の値まで回復するのに時がかかるようである。特に圧力低下が大きく生じた時にはこの回復に長時間を要している。

累積排水量と日排水量

累計揚水量および1日当たりに換算した揚水量の経時変化を図4に示した。井戸設置後には井戸掘削時の切りくず等の排出(井戸洗浄)のために、強制的にストレーナ管内に注水しており、揚水初期はこの時の供給水も揚水するために、揚水量が急増する結果となっている。同様の洗浄は、途中で水位センサーを交換したときにも行っており、1月14日にも揚水量の急増が見られている。 揚水量の増加傾向は、1月14日付近を境に異なっており、それ以前の揚水量(日平均排水量)は約0.6~0.8m3/dayであるが、その後は0.5m3/day以下であり、約0.3m3/day約1/2に減少している。初期の排出量が多いのは、前述のように、揚水時にストレーナ管内を大気圧に戻していることと、井戸洗浄による供給水の回収などのためと考えられる。1月14日以降についてみると、2月7日までに約5m3の水をmarina clay層から強制的に吸い出したことになる。なお、井戸内水位の観測結果から、2月2日~2月4日にかけてのポンプによる揚水量がほとんど0の期間でも井戸内の水位は徐々に上昇しており、揚水可能水位に達した時点で揚水が可能になっている(2月5日)。

累積排水量と日排水量

marine clay内に設置した間隙水圧計の測定結果を図5に示した。SWP井戸からの離れは、図1に示したように、PZ1は約3m、PZ2は6m、PZ3は11mである。PZ1およびPZ2は同一深度(RL=92m)に設置しているが、PZ3はそれらよりも2m深いRL=90mに設置してある。そのために、PZ3は他の2つよりも大きな間隙水圧値の示しているが、RL=92mに換算したときの間隙水圧値は他の間隙水圧計の値とほぼ一致している。設置初期には設置作業に伴う過剰間隙水圧が発生しているが、SWPが稼働する時期(1月3日)には、ほとんど静水圧状態(PL=92mで約73kPa)になっている。その後のSWP井戸の洗浄作業による間隙水圧の上昇が測定されているが、井戸に真空圧を作用させて以降は、全ての間隙水圧計が減少傾向を示している。特に井戸の近いPZ1およびPZ2では、洗浄作業での上昇圧が作業の終了と共に急速に減少することが観察されている。その後の間隙水圧の減少速度はPZ1、PZ2およびPZ3でほぽ同じ(-0.13kPa/day~0.27kPa/day)であり、SWP井戸から10m以上離れた地点まで、ほぼ一様に真空の影響が及んでいることがわかる。一様な真空効果の伝搬には、今回の試験箇所が周囲を止水壁で囲まれた閉鎖空間であることが大きく関与している可能性があり、止水壁が無ければ真空の効果は遠方では急速に拡散してしまうことも考えられる。

5.おわりに

非常に困難であると想定された中間砂層を含まない均一な粘土層からの真空脱水も、平均すると約0.3m3/dayでの脱水が実現している。また、真空を作用させている揚水井戸から10m以上遠方まで、真空の影響が粘土層内にほぼ一様に伝達されていることがわかった。実験は現在も継続中である。井戸内の水位変動についてもデータが得られつつあるが、その後の測定結果も含めて別の機会に改めて報告する。

粘性土の負圧化による真空気化乾燥促進

粘性土の負圧化による真空気化乾燥促進
  • ①SKKとQin-TAKO工法により、ボルテックスブロアにて砂層の天場と粘性土を真空化(負圧化)させる。
  • ②その事により水の沸点温度が低下して間隙水が水蒸気として膨張し、SKK及びQin-TAKOにより地表へ吸引排出され、地盤が乾燥される。
  • ③この時、間隙水圧は負圧化していて、地震時に過剰間隙水圧にはならず、液状化防止できる。
  • ④砂層では間隙の5%以上の真空トラップによる空気量が永久に残留する為、液状化防止として有効(港湾空港研究所との共同特許)

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